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2012年04月19日
ジンバル雲台の軸受け部 中身拝見
これはジンバル雲台「究具01」の軸受け部の中身です。
外観ではわからない、軸受け部とそれぞれのパーツの役目を見てみましょう。
●切削ステンレス製シャフト
ステンレス丸棒からの切削加工軸はネジ押圧の組立て品と異なり、剛性・精度・耐久性に優れます。
●組み合わせアンギュラベアリング
軸に受けるラジアル荷重に対して2つの深溝玉軸受け(ベアリング)がしっかり支え、デジスコ用途であれば半永久的に精度を保つことができます。しかも、スラスト方向にも力がかかるため、高価で希少なアンギュラベアリングを2個背中合わせで使い、小さなスペースで大きな作用点を設ける設計にしています。これにより軸の許容傾きは小さくなり、光学機器による軸受けの角度変化を極めて小さくすることができます。
●テフロン摺動プレートと特殊潤滑オイル
一つの軸に対し、トータル7枚のテフロンプレートを使用しています。このプレートはアルミ板に4フッ化エチレンを焼結加工したものでジンバル雲台で押圧した場合に金属製スラストベアリングを遥かに上回る滑りを示し、4フッ化エチレンの弾性と滑りの組み合わせでデジスコ撮影には最適な回転抵抗感を作り出すことができます。また、シリコンオイルなど磨耗を促すオイルを使わずに熱による液垂れや劣化、損耗のない特殊潤滑油を併用することで繊細な使い心地を作り出しています。
●スプリングワッシャー
2~3枚のウェーブスプリングワッシャーを使い、テフロンプレートの寸法クリープ変化に対応しています。樹脂系素材は応力を受けると変形し、変形したままの状態を続けると塑性変形と言われる「つぶれ」による寸法変化が起こります。4フッ化エチレン(テフロン)はクリープ変化は少ないと言われていますが多少は発生します。
もちろん、調整リングを弛めた場合のガタ防止にも役立っています。
これはB社さんのジンバル雲台の中身です。
●摺動性グラファイトプレート
グラファイトプレートと思われる摺動材が採用されています。シャフトの根元をダイヤルの回転スラスト押圧で引き寄せる際に介在し滑りを滑らかにする目的のパーツ。
●アルミ製軸と組み合わせダイアルネジ
切削アルミ軸の先端に鉄製オスネジの組み合わせシャフトと思われます。強度的には充分と思いますが、ダイアルネジピッチが大きく、微細な押圧調整は難しいでしょう。
●樹脂製軸受け
アームが鋳造品であり、軸受け部は切削でさらってはあるのですが・・・その不陸に対応できるように2つの樹脂製軸受けを採用しています。樹脂軸受けの摺動性はそこそこあると思いますが、軸にかかる重量により弾性変形し、クリープによりいずれは塑性変形も起こります。さらに摺動面に異物が入ることで磨耗も促進されガタにつながります。樹脂と金属の温度による収縮率は1桁異なります。従って、設計時にシックリと馴染ませても温度変化できつくなったりガタついたりします。従って設計上はシャフトに接する面に大きくクリアランスを作る必要があります。もともと、ガタができているわけですから精度など期待できません。
デジスコのように狭い画角の中で微細な位置移動をしなければならない撮影法においては、樹脂軸受けでは充分な性能は出せないと考えてください。
あくまでも、レリーズを指で押す撮影のデジイチ撮影が基礎になっているジンバル雲台です。
但し、使用頻度の少ない場合は、性能は許容範囲と思われます。
ヘビーユーザーにはお勧めできない軸受け構造と考えてください。
●スラストベアリング
スラストローラーベアリングを採用しています。ダイヤルの回転スラスト押圧で引き寄せる際に回転を滑らかにする対策。さらに、適度な抵抗感を作るために高粘度シリコンオイルを添加。このシリコンオイルは樹脂下地などの場合、スラストベアリング特有の不規則な回転障害を使用者にわからなくするためのものと考えられます。ベアリングに研磨剤のようなシリコンオイルを添加することは耐久性・摺動性において一般的ではありません。
■■まとめ
B社さんのジンバル雲台は、野鳥撮影大口径レンズデジイチ用の設計を模倣したものであり、デジスコのように焦点距離が3倍以上の撮影では微細なガタや大きな抵抗感のある動きでは実用的ではありません。デジスコにはデジスコ用の回転軸保持や繊細なフリクションコントロールが必要です。
撮影画角の中で画角寸法の1/5ぐらいの移動が撮影者の意図で自在にできる滑らかさと適度な抵抗感が必要です。
回転シャフト周辺部だけを見てもこれだけの差があります。当然、究具01は高価になりますがデジスコ用途においては群を抜いた性能を示すことができます。
この究具01も残り30台ほどで製造終了となります。後継はGIM-01(ジムゼロイチ)という名称のジンバル雲台が引き継ぎます。
しかし、残念ながらアンギュラベアリングの入手困難と価格高騰という問題が大きくGIM-01は究具01のような超繊細なフィーリングは得られません。史上最高のデジスコ用ジンバル雲台を新品で得られる最後のチャンスとなります。是非、このチャンスに究具01を手に入れてください。
投稿者 たーぼ♪ : 2012年04月19日 10:51
コメント
たーぼ♪さん、こんばんは。
究具01、それは、素人の私でさえも、この工作精度と使用感の素晴らしさ
が分かるような製品です。私が究具01に惚れ込んでいることは、ユーザー
登録カードでもお分かりでしょう(^_^;。
今回、中身の解説を読んで、さらに究具01に惚れ込みました。
私は、この先歳をとって歩けなくなる限りまで、究具01でデジスコをして
いると思います。
あと30台で製造終了ですか?今回も良い買い物をしたと思っています。
技術指導、メンテナンスも含めて、末永くお付き合い頂きたいと思って
おります。
投稿者 きになる君 : 2012年04月20日 21:29
究具01連れてブラジル赴任してましたが、ブラジルで訪れたItatiaia(ブラジル最古の国立公園)でオーストラリアのカメラマンたちに究具01は注目されて話しかけられました。よいものは見る人が見るとわかるんだなぁ~って思いました。今は大連に連れてきてます。体調戻ったらデジスコ再開します!買って以来いい買い物をしたなぁ~って思っています。
投稿者 mhk : 2012年04月21日 04:11
きになる君さん
ありがとうございます。私と同じ(以上?)ぐらいに惚れこんで頂き、すごく嬉しいです。
たくさんの愛好者の皆様に支えられて、なんとかここまで続けることができました。
もちろん、永年お使いいただけるよう、しっかりサポートさせて頂きます。ご安心ください。
mkhさん
なんか、わが子が世界旅行している感じです(笑)
本当に使い込んで頂き、心から嬉しく思います。
設計者って、考えて作ったものを愛用いただくことが一番嬉しいのです。
まずは、体調を良くしてください。そして、たくさんたくさん、写してくださいね(^_-)-☆
投稿者 たーぼ♪ : 2012年04月24日 01:45